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原発不明がん

原発不明がんとは

 原発不明がんとは、十分な検査にもかかわらず最初に発生した臓器(原発巣)がはっきりせず、病理診断でも転移巣と判明しているがんのことを指します。その頻度は、すべてのがんの約1~5%とされています。原発巣が確定できず、転移巣が大きくなったがんのため、病気の部位やがんの種類(組織型)が異なり患者さんごとに様々な病態をとります。また、診断時には半数以上で複数の臓器への転移がみられます。したがって、手術(外科治療)でがんを完全に取り除くことや、放射線治療で死滅できる時期を過ぎていることが多く、全身状態に合わせて抗がん剤による全身療法を中心とした治療が選択されます。

原発不明がんの症状

 原発不明がんの症状は様々で、がんが拡がっている場所(転移部位)によって異なります。以下の様な症状のある場合は担当医にご相談下さい。

1. リンパ節腫大
首の周りやわきの下、太もものつけ根などのリンパ節は体の表面にあるので触れやすいため、痛くないしこりとして見つかることがあります。
2. 胸水、腹水
胸に異常に多量の液体(胸水)がたまると心臓や肺を圧迫し、胸痛や息苦しさが出ることがあります。また、腹水がたまると腹部が膨れてきたり、張ったりすることがあります。
3. 肺腫瘍、肝腫瘍
肺へのがんの拡がり(肺腫瘍)により咳や胸痛、声のかすれが出ることがあります。また、肝への拡がり(肝腫瘍)の大きさや場所によっては、上腹部の不快感や膨満感が出たり、しこりを触れたりすることがあります。
4. 骨の症状
骨にがんが拡がると骨の痛みや、神経の圧迫によるしびれや麻痺(まひ)を生じることがあります。

原発不明がんの診断方法

 がんが疑われるものの原発巣が明らかでない場合には、原発巣をスクリーニングするとともにがんの確定診断のために、病理検査(病理診断)が必要となります。
 全身のスクリーニングとしては、腫瘍マーカーを含む血液検査や尿検査およびレントゲンやCT検査、MRI検査などの画像検査を行います。内視鏡検査(胃カメラ、大腸カメラ)や核医学検査(骨シンチグラフィー、PET-CT検査)が必要となる場合もあります。また、病理診断では、腫瘍組織を切除や特殊な針を用いて採取(生検)し、がんの確定診断を行うととともに、その性質も検討します。電子顕微鏡による観察や染色体、遺伝子検査が有用な場合もあります。
 これらの検査を十分に行っても、原発巣が特定できない場合には原発不明がんの診断となります。

原発不明がんの治療

1. 特定の治療方法が考慮される場合

 原発不明がんのなかには、臨床的に特定の原発巣のあるがんと非常に近い病態を持つものがあります。その場合は、その推定されるがんに対する標準治療を行います。
 女性では、わきの下のリンパ節転移のみ有する場合は乳がん準じて、腹膜転移のみ有し、腫瘍マーカーのCA125が上昇している場合は卵巣がんに準じて治療を行います。男性では、骨転移のみ有し、腫瘍マーカーのPSAが上昇している場合は前立腺がんに準じて治療を行います。また、首の周りや太もものつけ根のリンパ節転移のみ有する場合は、手術による転移リンパ節の摘出や放射線治療、放射線治療と抗がん剤との併用治療が選択されます。

2. 特定の治療方法が考慮されない場合

 原発不明がんの多くは、がん病変の分布とその種類(組織型)の組み合わせが特徴的ではないため、特定の治療方法がありません。また、すでに進行して転移している状態で診断されます。その場合には、抗がん剤(薬物療法)を主体とした治療が行われます。一方、クオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を重視した治療として、がんによる身体的ならびに精神的症状を和らげる緩和ケアも考慮します。

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