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甲状腺がん

甲状腺がんとは

 甲状腺悪性腫瘍には、濾胞上皮細胞由来の乳頭がん・濾胞がん、低分化がん、未分化がん、傍濾胞上皮細胞由来の髄様がん、リンパ球由来のリンパ腫のほか、扁平上皮がん、肉腫、転移性腫瘍などがあります。日本のようなヨウ素摂取が充足している地域では、90%以上が乳頭がんであり、濾胞がんが5%程度、未分化がんや髄様がんはそれぞれ1-2%前後であるとされています。

甲状腺癌の危険因子

① 放射線被ばく:
甲状腺への被ばく量と甲状腺がん発生率の間には比例関係が存在します。また、被ばく年齢が若いほど発症リスクは高くなることが知られています。
② 遺伝:
髄様がんの40%程度は遺伝型で、常染色体優性遺伝の遺伝形式を示します。髄様がんでは多発性内分泌腫瘍症や家族性髄様がんの検索が必要です。髄様がん以外の甲状腺がんでも約5%に遺伝性を認め、家族性大腸ポリポーシスやCowden病などの検索が必要です。

甲状腺がんの症状

  1. 原発巣による前頚部結節、リンパ節転移による側頚部結節を自他覚的に触知します。
  2. 反回神経、気管、食道などに浸潤する局所進行がんでは嗄声、呼吸困難、血痰、嚥下障害を伴います。
  3. 未分化がんでは急激に増大する前頚部腫瘤とともに発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状も見られます。
  4. 甲状腺がんでは通常甲状腺機能異常を認めることはありません。

甲状腺がんの診断方法

  1. 視触診、問診で前頚部腫瘤やリンパ節腫大の有無、遺伝性などを含めて確認します。
  2. 採血で甲状腺機能、自己抗体、腫瘍マーカーなどの測定を行います。
  3. 頚部超音波検査、穿刺吸引細胞診により腫瘍の形態、浸潤の有無、リンパ節腫大の有無と病理診断を得ます。穿刺吸引細胞診は感度、特異度共に正診に繋がらないこともあるため、腫瘍の大きさや形状によって経過観察を行いながら経時的に再度細胞診を行うこともあります。
  4. CT検査、MRI検査により遠隔転移を含めた診断を行います。甲状腺がんの病期分類はUICC/AJCC第8版が最新であり、この分類に応じて診断を行います。

各がん腫の治療

① 乳頭がん:
切除可能病変であれば原則甲状腺片葉切除もしくは全摘にリンパ節郭清を併施します。多臓器浸潤や遠隔転移を認める症例では全摘後の化学療法の適応となります。一方で腫瘍径が1cmに満たない病変では直ちに手術を行わずに経過観察を行うこともあります。
② 濾胞がん:
遠隔転移が明らかな濾胞がんに対しては、甲状腺全摘のうえで131I大量療法を行います。
③ 未分化がん:
腫瘍の広がり、全身状態、予後因子などを加味して治療方針を決定します。放射線療法、手術、化学療法の集学的治療を行いえた場合には長期生存例が見られることがあります。集学的治療により血管の破綻を見ることがあるため、腫瘍崩壊そのものが予後に直結しない面でも治療が難しい腫瘍です。
④ 髄様がん:
遺伝型で褐色細胞腫が合併している場合にはそちらを先に治療します。甲状腺に対しては全摘を行います。
⑤ その他の甲状腺悪性腫瘍:
悪性リンパ腫、転移性腫瘍などを含めた腫瘍では生検によって治療方針を決定する必要があり、組織診断のための開放生検を行う場合もあります。

甲状腺がんに対する治療のために

 甲状腺がんの予後は一般的に良好ですが、一部の組織型では予後不良な群が存在します。今日では、検診や他科検査によって頚部腫瘤を微小病変の状態で発見する機会も増えていると思われます。病変が疑われた場合には、病院を受診して診断と経過観察を含めた治療を受けて頂くことが重要です。一方で、東日本大震災に伴う放射線被ばくに関して現時点では明確な科学的根拠はないことにも留意し、医師の診察のもとで適切な知識を得て頂くようお願いいたします。

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