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口腔がん

口腔がんとは

 口腔がんは、がん全体の中では1~2%と比較的少ないがんです。口腔がんの中では舌がんが6割程度と最も多く、次に歯肉がんが続きます(写真1、2)。その他にも舌と歯との間に位置する口底部、頬粘膜、上あご(口蓋)、口唇といった口腔内のあらゆる部位に出現します。口腔がんに対して、飲酒や喫煙は確実な危険因子であることが報告されていますが、その他にもアセトアルデヒド脱水素酵素2型の変異、口腔内が不衛生であること、虫歯や不適合な被せ物の鋭利な部位による口腔粘膜への機械的刺激、歯並びから極端に飛び出た歯による舌や頬粘膜への機械的刺激なども口腔がんの発生に関わってくる可能性が指摘されています。がんの種類としては口腔内粘膜上皮から発生する扁平上皮がんが最も多いですが、また唾液を作る部位である唾液腺から発生するがんもあります。歯が原因のがんも報告されていますが稀です。

口腔がんの症状

 口腔がんの初期症状は、口の粘膜の白い病変や、口内炎の様な症状として出現します。初期がんは自覚症状に乏しく、歯科医院などでの口腔内の診察時に指摘されることがあります。口内炎だと思っていて数週間治療を行った結果治らず、専門医に紹介されてがんであることが確認されることもあります。早期対応が為さなければ病変は時間とともに大きくなり、内部の方へ浸潤が進み、周りと比べて硬くなってきたりします。さらに進行したがんになると、開口障害や舌の運動障害、神経麻痺、痛み、飲み込みづらい、食べにくい、話しづらいなどの症状が出てきます。

口腔がんの診断方法

 口腔がんの診断ついてはまず口腔内の診察で病変の大きさや性状を確認することから始まります。また、異常な粘膜を区別できるヨード染色という検査を行うことによって、がん周囲の異常な細胞も含めて判断することができます。がんの進展状況や、顎の下や首のリンパ節への転移の有無を確認するために、造影CT、造影MRIといった画像での評価も行います。顎の骨の周囲のがんであれば骨シンチグラフィーという検査も追加して骨への浸潤程度をCT、MRIとともに評価します。超音波での検査も、がんの深さの確認や、リンパ節の評価に有効です。体の他の部位への転移の有無についてはPET検査で行います。最終的にがんであることを確定するには生体検査(生検)が必要です。生検ではがんと思われる部位の一部を採取して顕微鏡での検査を行います。生検での組織診断では、その後の治療計画を決めるに当たって、がんの悪性度や浸潤様式なども評価することができます。また、口の中の上皮と同じである食道にも同様ながんが無いかを内視鏡で確認することも重要ですので、消化器内科に検査を依頼しています。

口腔がんの治療

 前述した検査により口腔がんの進展範囲が評価され、治療方法が検討されます。比較的小さながんであり、リンパ節への転移や遠隔転移が無ければ、手術によるがんの切除が行われます。傷については、舌などの軟組織であれば縫い寄せたり、もしくは腹部などからの皮を採取して傷に貼ったり、コラーゲンやポリグリコール酸といった人工材料が貼られたりします。口腔内の傷の汚染が危惧されるために、口からの食事は数日控え、鼻から胃の中に管を通してそこからの栄養管理を行います。手術での切除する範囲が大きく、切除した部位の再建が必要になれば、体の他の部位からの骨、筋肉、皮などの組織を採取し、切除した部位の再建手術が同時に行われます。リンパ節への転移や、その可能性が考えられる症例については、顎の下や首のリンパ節とその周囲組織を取り除くといった頸部郭清術も行われます。また頸部郭清術によって取り除かれた組織の検査の結果、転移したリンパ節の数やその周囲へのがんの浸潤の有無によっては、放射線療法や化学療法が追加されることもあります。その他、小さながんであればがん組織内に放射線性物質を挿入する組織内照射による治療の選択肢もあります。口腔がんの治療後には、発音、嚥下障害、開口障害などが伴うことがあり、そのような症例に対しては言語治療、嚥下訓練、開口訓練が必要となります。歯と骨を含めての手術であれば、手術後の噛み合わせの治療が必要であり、失われた歯や骨に合わせた入れ歯(顎補綴装置)の作製や、広範囲顎骨支持型装置と呼ばれる健康保険適応のインプラント治療による治療が必要となります。よって、がんを切除し、同時に骨の再建手術を行う時から、手術後の噛み合わせを考慮した計画を立てる必要があります。顎の骨の再建手術後も、インプラント治療に向けた歯茎の形態修正などが必要となり、最終的な噛み合わせの回復までには口腔外科医や義歯専門医などによる口腔管理が重要です(写真3)。


写真3
左写真:歯肉がん患者のレントゲン写真。点線部位の範囲を切除しました。
右写真:切除された顎の骨をチタンメッシュと腸骨とで再建し、インプラントを植立しています(最終的な歯を入れる前のレントゲン写真)。

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