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悪性中皮腫

悪性中皮腫とは

 肺や心臓は胸膜・心膜,腹部の胃腸・肝臓などの臓器は腹膜という膜にそれぞれ包まれています(図1).これらの膜の構成組織である中皮から発生したがんを,悪性中皮腫といいます.悪性中皮腫は,アスベストを吸い込んでから25~50年程度で発症するといわれています.職業曝露や建築用資材で使用されたことなどが問題となりました.現在日本ではアスベストの輸入・使用は禁止されていますが,過去に吸入したアスベストが影響して増加傾向にあります.

悪性中皮腫の症状

 心膜・胸膜中皮腫では,進行すると膜全体に病変が広がり,胸腔内にがん細胞を含んだ水が溜まります(図2,図3).その結果,胸痛,息苦しさ,息切れ,咳などの症状が出現します.腹膜中皮腫では,腹腔内に水が溜まり,腹部膨満感や腹痛,腰痛,食欲低下,排便の異常,腹部にしこりができたりします.病気が進行すると,体のだるさ,体重減少,発熱などもみとめます.

悪性中皮腫の診断方法

 まずCT画像や超音波検査で病変の有無を調べ,必要に応じて胸水・腹水を採取して細胞診を行います.確定診断には胸膜や腹膜の一部を採取して病理診断をする必要があります.また,病変の広がりを調べるために,全身CT検査やPET検査などを行います.

悪性中皮腫の治療

 治療は病変の広がりや病状などにより異なります.全身状態がよく,病変が限局しておりすべてを完全に取りきることが可能であると判断された場合には,外科的療法の対象となります.外科的療法が困難な場合には,放射線療法や薬物療法(抗がん剤),対症療法などを行います.悪性胸膜中皮腫の場合は,胸膜癒着術といって,胸腔内に薬剤を注入して胸水が溜まるのを防ぐ方法を使うこともあります.悪性中皮腫は早期発見が難しく,多くは薬物療法が選択されます.薬物療法には,胸膜中皮腫に有効なシスプラチンとペメトレキセドの併用療法があり,最近,免疫チェックポイント阻害剤が使用可能となり効果を発揮しています.また,病巣による痛みや遠隔転移病変の制御などのために放射線療法を併用することもあります.

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