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悪性黒色腫(メラノーマ)

悪性黒色腫(メラノーマ)とは

 悪性黒色腫(メラノーマ)は「ホクロのがん」とも呼ばれていて、皮膚の色素(メラニン)を作るメラノサイトという細胞が悪性化したものです。リンパ行性、血行性に転移し、皮膚がんのなかで予後が悪いものの1つです。メラノーマは白人に多いとされていますが、日本人でも増加傾向にあります。日本におけるメラノーマの患者さんは10万人に1~2人と言われ、日本では4000人前後の患者さんがいるとされています。

悪性黒色腫(メラノーマ)の症状

 メラノーマは足の裏や手のひら、顔面や体など様々な部位に出現し、目や口の中などの粘膜にできることもあります。メラノーマの症状は「左右が対称でない」、「輪郭が不整で染み出しがある」、「色むらがみられる」、「大きさが6mm以上ある」、「急速に大きくなる」などの特徴があります。
 メラノーマは見た目や部位などから4つのタイプに分けられ、「末端黒子型」は足の裏や手のひら、手足の爪に発生し、最初は薄い黒色のシミのような見た目ですが、次第に色が濃くなり、潰瘍を伴うこともあります(図1)。このタイプは日本人に多いことが分かっています。爪にできた場合は縦に黒色のスジができ、進行すると爪が割れることもあります。「表在拡大型」は体幹や四肢などにみられ、最初はわずかに盛り上がったいびつな形のシミのような外観ですが、次第に一部が隆起してきます(図2)。「結節型」は最初から大きく盛り上がった黒い形で発生しますが、色が薄い場合もあります。「悪性黒子型」は顔面などの日光が当たりやすい部位に発生します(図3)。褐色から黒色のシミが出現し、ゆっくり大きくなり、一部が盛り上がることもあります。

悪性黒色腫(メラノーマ)の診断方法

 ダーモスコープという拡大鏡を用いた検査がメラノーマの診断に使われます。日本人に多い手足のメラノーマの診断では、指紋の凹んでいる部分に色素が強い場合は良性のホクロが考えられ、盛り上がった部分に色素が強い場合はメラノーマの疑いがあるとされています。他の皮膚がんでは診断のため、病変の一部を切除する生検を行いますが、メラノーマの場合は皮膚生検をすることで進行を早める可能性があり、部分生検でなく全体を切除し検査する切除生検を行うことが多くなっています。また、病気の進み具合をみるためにCT検査やPET検査なども行います。

悪性黒色腫(メラノーマ)の治療

 メラノーマ治療の主体は外科的切除であり、病変を取りきることが原則です。メラノーマはその厚さで進行度が変わると考えられており、病変から5mmから2cm離して切除し、必要に応じてセンチネルリンパ節生検を行います。画像検査で所属リンパ節転移への転移が見られた場合はリンパ節郭清を行います。センチネルリンパ節はメラノーマが最初に転移すると考えられるリンパ節のことです。このリンパ節に転移がなければ他のリンパ節に転移がないと推測されますが、転移があった場合は他のリンパ節にも転移がある可能性があり、リンパ節郭清が必要となります。メラノーマ手術後の再発予防や手術が難しい患者さんに対しては薬物治療を行います。薬物治療は以前は抗がん剤治療が行われていましたが、現在は免疫治療チェックポイント阻害薬と分子標的薬であるBRAF阻害薬が中心となっています。現在、日本でメラノーマに対する適応がある免疫チェックポイント阻害薬は抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の2種類です。一般にがん細胞は免疫機能にブレーキをかけることで増殖します。免疫チェックポイント阻害薬はがん細胞の免疫機能に対するブレーキを解除し、患者さんの免疫機能を高めてがん細胞を攻撃します。免疫チェックポイント阻害薬は免疫が過剰に働くことにより、肺炎や肝障害、下痢など様々な臓器に副作用が出現することが知られています。分子標的薬は抗がん剤と異なり特定の分子をもつがん細胞のみを攻撃します。メラノーマではBRAF遺伝子という遺伝子変異ががんの増殖に関わっていることが分かっており、この遺伝子変異をもつ患者さんにBRAF阻害薬というお薬を使います。日本人では20~30%の患者さんの病変にこの遺伝子異常があることが分かっており、遺伝子異常の有無を確認したうえで投与します。分子標的薬は抗がん剤でみられるような貧血などの副作用は出ませんが、抗がん剤とは異なる副作用が出現することがあります。

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