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頭頚部がん

頭頸部がんとは

 「頭頸部」と呼ばれる領域は、耳・鼻腔・副鼻腔・口腔・咽頭・喉頭・唾液腺・頸部食道・頸部といった広範な部位を含んでおり、これらの部位から発生する悪性腫瘍が頭頸部がんです(甲状腺腫瘍も扱っています)。「頭頸部がん」というと耳慣れない言葉かもしれませんが、全部合わせると日本人の罹患する悪性腫瘍の5〜6%を占めているがんです。頭頸部は咀嚼・嚥下・呼吸・発声・構音という人間の生命維持にとって非常に重要かつ必須の機能を担っており、また聴覚・嗅覚・味覚などの重要かつ多岐にわたる感覚機能を含んでいます。そのため、その治療にあたっては、これらの機能の温存、治療後のQOLを十分に考慮する必要があります。

頭頸部がんの症状

 頭頸部領域すなわち耳・鼻腔・副鼻腔・口腔・咽頭・喉頭・唾液腺・頸部食道・頸部にそれぞれ特徴的な症状が現れます。耳(外耳道がん)であれば耳漏・耳痛・難聴など、鼻・副鼻腔であれば鼻閉・鼻出血・嗅覚障害・頬部腫脹・眼球突出・視力低下・開口障害など、口腔であれば腫脹・腫瘤・疼痛・嚥下時痛・出血・構音障害・開口障害・咬合不全・咀嚼障害・嚥下障害など、咽頭であれば異物感・嚥下時痛・嚥下障害・嗄声・呼吸困難など、喉頭であれば嗄声・呼吸困難・嚥下障害など、唾液腺であれば耳下腺腫脹(腫瘤)・顎下腺腫脹(腫瘤)・口腔底腫脹(腫瘤)・疼痛など、頸部食道であれば嚥下障害・嚥下時痛など、頸部は原発部位からのリンパ節転移も多く、リンパ節腫脹(腫大)などが主な症状になります。

頭頸部がんの診断方法

 頭頸部領域は外来で視診・触診で観察できる部位が多く、またファイバースコープを用いて鼻腔〜上咽頭〜中咽頭〜下咽頭・喉頭を観察することができます。初診の段階で、ほぼある程度の診断が可能です。初診時に病理診断確定のために生検を行うことが多くなります。中には原発部位が不明で頸部リンパ節転移のみ明らかな患者さんもおりますので、その際には病理診断確定のため穿刺吸引細胞診や頸部リンパ節の生検を行うことになります。穿刺吸引細胞診や開放生検は唾液腺腫瘍(耳下腺腫瘍や顎下腺腫瘍)の診断にも用いられます。副咽頭間隙や頭蓋底の腫瘍は画像診断が中心になります。画像診断としてはCTやMRIを中心にFDG-PETを加えて全身検索を行っています。頭頸部がんの中心となる口腔・咽喉頭の扁平上皮がん患者さんは喫煙・飲酒の発がんリスクファクターを有していることが多く、上部消化管内視鏡検査も必ず行って重複がんの検索を行います。

頭頸部がんの治療

 前述したように頭頸部は消化器としての働き、上気道としての働き、感覚器としての働きなど、極めて重要な役割を担った領域なので、予後を改善することはもとより、治療後のQOLに十分配慮して治療を進めなければなりません。頭頸部がんは手術治療が中心ですが、手術のほか、化学療法や放射線治療を組み合わせた集学的な治療を行う一方、進行例の手術では再建術が必要で、術後の臓器・機能温存を十分に検討した上で外科・形成外科との共同手術を行っています。また、2018年4月から頭頸部がんの一部について粒子線治療(陽子線、重粒子線)が保険収載となり、頭蓋底腫瘍や唾液腺腫瘍などへの応用が進んでいます。
 咽頭がんを中心に化学放射線治療の有効性が示されており、放射線治療科と連携し多剤併用化学療法を組み合わせた同時併用化学放射線治療を行っています。また、主に上顎扁平上皮がんに対し、症例に応じて放射線診断科と連携して、超選択的動注化学療法を併用した放射線治療も行っています。早期の喉頭がん・下咽頭がん症例で音声機能の保存が可能な例には内視鏡治療を含めた喉頭部分切除、下咽頭部分切除術など術後のQOLを考慮した術式を選択しています。術後の嚥下訓練、発声練習を言語療法士および看護チームと密接に連携しながら、患者さんのより良い社会復帰に向けて努力しています。
 当科では全国でも1、2を争う頸動脈小体腫瘍(2017年WHO分類で悪性コードが付与され悪性腫瘍として取り扱われるようになった)の手術例を保持しており、患者の同意を得て家族例の検討のためSDH遺伝子ファミリーなど遺伝子変異の検索も行っています。手術例では術前栄養動脈塞栓療法の工夫と、手術操作の工夫により手術時間2時間前後、出血量は10ml前後で摘出を可能にしています。
 2018年4月には頭頸部外科と口腔外科と合同で頭頸部腫瘍センターが開設されました。窓口を一元化することにより口腔がんを始め、すべての頭頸部がんについてスムーズな診断・治療が行われるように取り組んでいます。現在、写真のように小所帯ではありますが、少数精鋭で北東北最多の頭頸部がん症例を集め、より良い治療を目指しています。

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