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子宮体がん

子宮体がんとは

 子宮は大きく子宮体部と子宮頚部の二つの部分に分けることができます。子宮体部は子宮の上部(体部)で、妊娠に際して胎児が発育する場所で、腹腔内(おなかの中)に突出しています。子宮頸部は子宮の下部で、腔の中に一部が突出する部分です。それぞれには異なったがんが発生します。子宮体がんは子宮体部の内膜に発生するがんで、子宮内膜がんとも呼ばれます。日本人女性の性器に発生するがんの中で最近罹患率(がんになる率)が増加しているがんです。以前は子宮のがんの5分の1の頻度であるとされていましたが、増加傾向にあり最近は子宮のがんの半分くらいの数を占めるようになりました。おもな組織型は類内膜がんです。その他に比較的稀な組織型として漿液性がん、明細胞がん、粘液性がんなどがあります。

子宮体がん(内膜がん)の現状

 子宮体がんの罹患率は40歳台より増加し50歳台(閉経後)にピークがあり60歳台、70歳台とやや減少します。最近、罹患率は増加し、死亡数も増加しています。子宮体がんは二つのタイプに分けることができます。タイプ I はエストロゲン(卵巣から分泌される卵胞ホルモン)に依存して発生するがんで、タイプ II はエストロゲンに依存しないで発生するがんです。タイプI が閉経前後の女性に発生し、浸潤が少なく転移の頻度が低く予後が比較的良いのに比べて、タイプII は閉経後の高齢者に発生し、浸潤が多く転移の頻度が高く予後が悪いという特徴があります。発生原因として、特にタイプ I の子宮体がんにおいては「エストロゲン関連危険因子」が指摘されています。「エストロゲン関連危険因子」として肥満、未婚・未産、不妊症・月経異常、エストロゲン製剤の単独使用、乳がんの術後治療に用いられるタモキシフェンなどが挙げられます。そのほかの子宮体がんの危険因子として糖尿病、高血圧があります。

子宮体がんの症状

 子宮体がん患者さんの約9割が「不正性器出血」を主訴として初めて婦人科を受診し、約6〜7割が早期がんで発見されます。好発年齢が閉経後であることから、閉経後の不正性器出血があるときには早めに産婦人科医を受診されることを勧めます。無症状の患者さんが比較的少ないことも特徴です。

子宮体がんの診断方法

1.細胞診

 細胞診は、病変部(病気のある部分)の細胞の特徴を顕微鏡で検査する方法です。子宮体がんの場合には細胞を採取するために特殊な器具を子宮腔内まで挿入します。こうして子宮腔内から採取された細胞をスライドガラスに薄く塗り、固定、色素で染めて顕微鏡で観察します。細胞の形、核の状態などで由来する組織の特徴を推察します。

2.組織診

 子宮内膜の一部を採取して顕微鏡で観察する検査です。採取時は金属製の棒の先に小さな受け皿がついたような器具、もしくは細胞検査に類似した吸引用器具を用います。狭い臓器の中を操作するため重苦しい痛みを感じることがあります。必要な場合には麻酔を併用し、子宮内膜をできるだけ広く採取することがあります。

子宮体がんの手術進行期分類(日本産科婦人科学会2011、FIGO2008)

I 期: がんが子宮体部に限局しているもの
I A期:がんの浸潤が子宮筋層の1/2未満のもの
I B期:がんの浸潤が子宮筋層の1/2以上のもの
II 期: がんが子宮頸部間質に浸潤するが、子宮をこえていないもの
III 期: がんが子宮外に拡がるが、小骨盤腔をこえていないもの、または所属リンパ節へ広がるもの
IIIA期:子宮漿膜ならびに/あるいは付属器を侵すもの
IIIB期:腟ならびに/あるいは子宮傍組織へ広がるもの
IIIC期:骨盤リンパ節ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節転移のあるもの
IIIC1期:骨盤リンパ節転移陽性のもの
IIIC2期:骨盤リンパ節への転移の有無にかかわらず、傍大動脈リンパ節転移陽性のもの
IV 期: がんが小骨盤をこえているか、明らかに膀胱ならびに/あるいは腸粘膜を侵すもの、ならびに/あるいは遠隔転移のあるもの
IVA期:膀胱ならびに/あるいは腸粘膜浸潤のあるもの
IVB期:腹腔内ならびに/あるいは鼠経リンパ節転移を含む遠隔転移のあるもの

子宮体癌取扱い規約 第4版(2017年)、金原出版 より改変

子宮体がんの治療

手術療法

 子宮体がんの基本的な治療法です。手術によって摘出した組織検体を病理学的に検討し、がんの発生場所、種類、拡がりなどを確かめ、最終的な診断(手術進行期分類)を行って治療方針を決めます。
 手術の内容は

(1)単純子宮全摘術および両側付属器摘出術

 子宮を全部切除する方法です。子宮体がんは卵巣へ転移をおこしやすく、I期~II期でも卵巣への転移率は5〜10%程度と報告されています。卵巣を温存することの安全性は確立しておらず、付属器(卵巣と卵管)も摘出するのが原則です。骨盤部と傍大動脈(腹部大動脈周囲)のリンパ節の「生検」あるいは「郭清」を加えることがあります。

(2)準広汎子宮全摘術
(3)広汎子宮全摘術

 いずれも子宮頸がんの手術として子宮傍結合組織と腟を広く切除する手術ですが、子宮体がんの手術においても、がんが子宮頸部に浸潤している場合に行われます。特に広汎子宮全摘術では子宮を支持する靭帯(基靭帯など)を骨盤の壁に付着している部位の近くから切除します。さらに骨盤の血管周囲にあるリンパ節を系統的に切除(郭清)します。

(4)腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術

 2014年に腹腔鏡下子宮体癌手術、2018年にロボット支援下子宮体癌手術が保険収載されています。どちらも術前の検査で比較的早期のがんが推定される場合に選択肢となります。腹部の数か所に穴をあけて、カメラや手術器具(もしくはロボットアーム)を挿入して手術を行います。開腹手術と比較して手術による侵襲が低く、術後早期の回復が可能となります。保険診療として行うためには一定の施設条件があります。

化学療法

 抗がん剤による治療のことです。術後に病理組織学的に再発のリスクが高い場合、進行がんの術後に残存する腫瘍の治療の場合、また再発の場合、あるいは手術の適応ではない場合などに行います。使用される薬剤は複数あり、抗がん剤抗生物質(アドリアマイシン)、プラチナ誘導体(シスプラチン、カルボプラチン)、タキサン系抗がん剤(パクリタキセル、ドセタキセル)などがあります。

放射線療法

 初回治療(手術)後、再発・再燃の場所が限局している場合に症状を抑える目的で行われることがあります。また、重篤な合併症や高齢のため手術が困難な患者さんに初回治療として行うこともあります。放射線の照射は、がんの状況によって体の外から照射する外部照射と、子宮の中から直接照射する腔内照射を組み合わせて行われます。

ホルモン療法

 子宮体がんがエストロゲン依存性であることが多いことから抗エストロゲン作用をもつプロゲステロン(黄体ホルモン)を大量に投与することによって子宮体がんの治療を行うことがあります。子宮体がんの初期で、妊娠を強く希望される場合、黄体ホルモン療法(MPA療法)が考慮されます。効果には限界があり、次のような条件をすべて満たす必要があります。

 1) がんが子宮筋層へ浸潤していない(子宮内膜にとどまっている)と見込まれる
 2) 分化度が高い(悪性度が低い)類内膜がんであること
 3) MPA投与禁忌(血栓症など)を有していないこと
 4) 強い挙児希望があること
 5) MPAによるホルモン療法について十分な理解が得られていること

 また、再発癌に対して黄体ホルモン療法を行うことがあります。黄体ホルモンに感受性があるがんにおいて、化学療法の効果が不十分な場合や全身状態が不良であるため化学療法を行うことができない場合に、化学療法にかわる治療として考慮されます。

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