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子宮頸がん

子宮頸がんとは

 子宮は大きく子宮頚部と子宮体部の二つの部分に分けることができます。子宮頸部は子宮の下部で、腔の中に一部が突出する部分です。妊娠を維持し、分娩に際して胎児の通過する部分になります。子宮体部は子宮の上部で、妊娠に際して胎児が発育する場所で、腹腔内(おなかの中)に突出しています。それぞれには異なったがんが発生します。
 子宮頸がんは子宮頸部に発生するがんです。子宮頸部の中でも特に直接腔の中に突出する部分の子宮腔部にある外子宮口付近に好発します。日本人女性の性器に発生するがんでは最も罹患する方が多いがんです。組織型では扁平上皮がんが多くを占めます。しかし最近腺がんが増加し、1960年代には子宮頸がんに占める割合が4%程度であったものが1993年で14%、2016年では20%になっています。

子宮頸がんの現状

 子宮頸がんの罹患率は20歳台より増加し、40歳台でピークとなりその後やや減少しますが、60歳以降に再び上昇します。日本人女性全体の罹患率は減少していましたが、最近では20歳台の女性罹患率の増加が指摘されています。また30歳台の浸潤がんが増加しています。
 HPV(ヒューマンパピローマウイルス)感染が子宮頸がん(特に扁平上皮がん)の危険因子であることが明らかになっています。HPVにはゲノムDNA塩基配列の違いによって100種類を超える型に分類されます。その中でも特にHPV16型・18型の持続感染による子宮頸がん発癌の関連が指摘されています。さらに、日本では、31、33、35、52、58型がハイリスクであることが知られています。そのほかの子宮頸がんの危険因子として初交年齢が低いこと、セックスパートナーが多いこと、お産の回数が多いこと、ほかの性感染症に罹っていることなどが挙げられます。いずれもHPV感染の可能性を高める要因です。

子宮頸がんの症状

 初期の子宮頸がんでは症状が全くないことがほとんどです。月経以外の性器出血あるいは性交後の異常な出血がある場合にはある程度進行したがんであることがあります。早期発見には子宮がん検診を受けることを勧めます。子宮がん検診は子宮頸がんを発見する目的で普及したがん検診です。この検診の導入により子宮頸がんの早期発見が可能になり、子宮頸がんによる死亡数を減らすことができました。

子宮頸がんの診断

細胞診

 細胞診は、病変部(病気のある部分)の細胞の特徴を顕微鏡で検査する方法です。へら、ブラシ、綿棒などを用いて病変部をこすると細胞がはがれてきます。これをスライドガラスに薄く塗り固定し、色素で染めて顕微鏡で観察します。細胞の形、核の状態などで良性・悪性の有無を判断します。子宮腔部は腔管の中に露出し、また子宮頸がんはこの露出した子宮腔部の一部に発生することが多いので比較的容易に細胞を採取・診断することができます。子宮頸がんの早期発見に有効な検査法です。

コルポスコピィ

 コルポスコピィは子宮頸部を拡大して観察する特殊な器械です。細胞診で異常が疑われた場合にこの器械を用いて検査をします。初期の子宮腔部の病変部は肉眼で観察してもわからないことが多く、病変部の状態・拡がりなどを判断するために必要な検査です。特にこの器械で観察して異常を判断した部分を切り取り、標本を顕微鏡で観察する「コルポスコピィ下ねらい組織診」は、子宮腔部の病変を正確に診断するために役立つ方法です。組織を切り取るときに、子宮腔部は痛みをほとんど感じませんので、外来で行うことができます。

組織診

 子宮腔部の一部を切り取って標本を作り顕微鏡で観察する検査です。標本が小さいのでさらに正確な検査をするために円錐切除術を行うことがあります。

子宮頸がんの病期分類

0 期または上皮内がん(CIS):
0期の子宮頸がんは非常に早期のがんです。がんは子宮頸部の上皮内のみに認められます。
I 期: がんが子宮頸部に限局して認められ、他へ拡がっていない状態(ただし子宮体部浸潤の有無は考慮しません)
Ia期: 組織学的にのみ診断できる浸潤がんで、肉眼的に明らかな病巣はたとえ表層浸潤であってもIb期とします。
浸潤は、計測による間質浸潤の深さが5mm以内で、縦軸方向の拡がりが7mmを超えないものとします。浸潤の深さは、浸潤がみられる表層上皮の基底膜より計測して5mmを超えないもので、脈管(静脈またはリンパ管)侵襲があっても進行期は変更しません。
Ia1期: 間質浸潤の深さが3mm以内で、拡がりが7mmを超えないもの
Ia2期: 間質浸潤の深さが3mmを超えるが5mm以内で、拡がりが7mmを超えないもの。 ただし子宮頸部腺がんについてはIa1、Ia2期の細分類は行いません。
Ib期: 臨床的に明らかな病巣が子宮頸部に限局するもの、または臨床的に明らかではないがIa期を越えるもの
Ib1期: 病巣が4cm以内のもの
Ib2期: 病巣が4cmを超えるもの
II 期: がんが子宮頸部を越えて拡がるが、骨盤壁または、膣壁の下1/3には達していないもの
IIa期: がんは膣壁に拡がっているが、子宮頸部の周囲の組織、すなわち子宮傍組織には拡がっていないもの
IIa1期: 病巣が4cm以内のもの
IIa2期: 病巣が4cmを超えるもの
IIb期: がんが子宮傍組織に拡がっているが、骨盤壁まで達していないもの
III 期: がんが骨盤壁まで達するもので、がんと骨盤壁との間にがんでない部分を持たないもの。または膣壁浸潤が下方部分1/3を越えるもの
IIIa期: がんの膣壁への拡がりは下方部分1/3を越えるが、子宮傍組織への拡がりは骨盤壁にまで達していないもの
IIIb期: がんの子宮傍組織への拡がりが骨盤壁にまで達しているもの、または腎臓と膀胱をつなぐ尿管ががんによりつぶされ、水腎症や無機能腎を認めるもの
IV 期: がんが小骨盤腔を越えて拡がるか、膀胱・直腸の粘膜にも拡がっているもの
IVa期: 膀胱や直腸の粘膜へがんが拡がっているもの
IVb期: 小骨盤腔を越えて、肺のような遠隔臓器にがんの転移があるもの

(国立がんセンター がん対策情報センターホームページより転用)

子宮頸がんの治療

手術療法

1.円錐切除術

 がんが見つかった部位を含めて子宮腔部を円錐状に切り取る手術です。前がん病変(高度異形成)や上皮内がん(O期)に対する標準的手術です。また精密な検査の目的でも行われ、切除した部分にがんがすべて含まれ、しかもO期がんであると判断した場合には追加治療は行われません。その逆に進行したがんと判明した場合には子宮全摘術等が行われます。

2.単純子宮全摘術

 子宮を全部切除する方法です。おなかを切開する場合(腹式子宮全摘術)、腔から摘出する場合(腔式)があります。場合によって子宮付属器(卵巣と卵管)も切除します。

3.準広汎子宮全摘術
4.広汎子宮全摘術

 いずれの手術も子宮頸がんの病変部に接した子宮傍結合織と腔を広く切除する手術です。特に広汎子宮全摘術では子宮傍結合織の骨盤の壁に付着している部位の近くまで切除します。さらに骨盤の血管周囲にあるリンパ節とリンパ管を系統的に切除(リンパ節郭清)します。術後排尿障害やリンパ浮腫がおこることがあります。

化学療法

 化学療法とは、抗がん剤による治療のことです。子宮頸がんの治療では抗がん剤を次にあげるような目的に使います。再発・再燃の治療、手術あるいは放射線治療の適応ではない場合、放射線治療の効果を増強するための併用(放射線化学療法)、病変部位が大きく手術が困難で縮小してから手術を行う場合などです(術前化学療法)。使用する薬剤は卵巣がんの治療にも用いられるプラチナ誘導体、トポイソメラーゼ阻害薬、代謝拮抗薬あるいは分子標的治療薬(血管新生阻害薬)などです。

放射線療法

 放射線治療は電磁波(X線、γ線など)と粒子線(電子、陽子、中性子など)を使ったがん治療の方法です。子宮頸がんの治療にはX線、γ線、電子線などを用います。放射線の照射は状況によってからだの外から放射線を当てる外部照射とからだの中から放射線を当てる密閉小線源治療の二つの方法があり、これらを同時に使ったり使い分けたりします。手術と同様の局所療法ですが、その効果は手術療法とほぼ同等であると報告されています。

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