岩手医科大学 臨床研究支援センター 治験ユニット

GCP基礎知識(医師向け)

1.治験責任医師の業務の流れ【治験開始前】

1-1 治験責任医師の要件

GCP(Good Clinical Practice)は治験依頼者、医療機関及び治験責任医師の役割を明確に定め、治験が倫理的、科学的に適切に実施されることを求めている。治験責任医師は、治験実施計画書に記載している治験使用薬の適切な使用方法に精通し、GCPを熟知し、これに従わなければならない。

治験を引き受けるにあたって、治験責任医師として次の要件の確認が必要である。

  • GCPを熟知しており、遵守できる。
  • 治験を適正に行うことができる過去の教育・訓練及び臨床経験を証明する最新の履歴書及びその他の適切な文書を治験依頼者に提出できる。
  • 治験実施計画書、最新の治験薬概要書、治験使用薬の適切な使用方法に精通する。
  • 治験依頼者、治験審査委員会並びに規制当局が実施する直接閲覧を受け入れることができる。
  • 治験依頼者の協力を得て、同意説明文書の作成または改訂を行うことができる。
  • 治験依頼者が希望する治験予定期間内に必要数の適格な被験者を集められる。
  • 合意された期間内に治験を適正に実施し、終了するに足る時間的余裕がある。
  • 治験実施のための、十分な数の治験分担医師及び治験協力者等を確保できる。
  • 治験に必要な設備を利用することができる。

1-2 治験実施計画書(案)等の協議・合意

治験責任医師は、治験の開始前に治験実施計画書の倫理的・科学的妥当性について治験依頼者と十分協議し、合意と遵守の証として、治験依頼者とともに治験実施計画書あるいはそれに代わる文書に記名押印又は署名を行い、日付を記入する。

治験依頼者が提示するのは治験実施計画書の「案」であって、治験依頼者との間で合意されたものがはじめて治験実施計画書となる。

1-3 治験分担医師及び治験協力者と担当業務のリスト作成

治験責任医師は、治験を適正かつ安全に実施するため、治験予定期間中に適格で十分な数の治験分担医師及び治験協力者を確保しなければならない。

また、分担させる業務と分担させる者のリストを作成し、あらかじめ病院長に提出し、その了承を受けなければならない。

1-4 治験同意説明文書の作成

被験者から治験参加の同意を得るための同意説明文書を、被験者が理解できる平易な表現を用いて作成しなければならない。なお、同意説明文書を作成するにあたっては、治験依頼者が作成するのに必要な資料・情報を提供し、作成に協力することになっている。

同意・説明文書の記載項目

  • 治験が研究を伴うこと
  • 治験の目的
  • 治験の方法
  • 被験者の治験への参加予定期間
  • 治験に参加する予定の被験者数
  • 予期される臨床上の利益及び危険性又は不便
  • 患者を被験者にする場合には、当該患者に対する他の治療方法の有無及びその治療方法に関して予測される重要な利益及び危険性
  • 治験に関連する健康被害が発生した場合に被験者がうけることのできる補償及び治療
  • 治験への参加は被験者の自由意思によるものであり、被験者又はその代諾者は、被験者の治験への参加を随時拒否又は撤回することができること。また、拒否・撤回によって被験者が不利な扱いを受けたり、治験に参加しない場合に受けるべき権利を失うことはないこと
  • 治験への参加の継続について被験者又はその代諾者の意思に影響を与える可能性のある情報が得られた場合には速やかに被験者又はその代諾者に伝えられること
  • 治験への参加を中止させる場合の条件又は理由
  • モニター、監査担当者、治験審査委員会及び規制当局が原医療記録を閲覧できること。その際、被験者の秘密は保全されること。また、同意説明文書に被験者又はその代諾者が記名押印又は署名することによって閲覧を認めたことになること
  • 治験の結果が公表される場合であっても、被験者の秘密は保全されること
  • 被験者が費用負担をする必要がある場合にはその内容
  • 被験者に金銭等が支払われる場合にはその内容
  • 治験責任医師の氏名、連絡先
  • 被験者が治験及び被験者の権利に関してさらに情報が欲しい場合又は治験に関連する健康被害が生じた場合に紹介すべき又は連絡をとるべき医療機関の相談窓口
  • 被験者が守るべき事項

1-5 契約書内容の確認、記名押印又は署名

治験責任医師は、医療機関と治験依頼者との間で締結された契約内容を確認し、確認した証として、契約書に記名押印又は署名しなければならない。

1-6 スタートアップミーティング

治験責任医師は、治験開始に先立ち、治験を正確かつ円滑に実施するためにスタートアップミーティングに参加する。

スタートアップミーティングは、各部署の関係スタッフが一堂に会して、処方オーダーの手順、残薬回収方法、保険外併用療養費等への対応をはじめとする治験実施上必要な業務についての最終確認を行う。

治験薬搬入は、スタートアップミーティング後に行う。

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