岩手医科大学 臨床研究支援センター 治験ユニット

CRC業務マニュアル

治験実施中

1.被験者の適格性の事前スクリーニング

この業務はカルテ等の記載内容を把握する力が必要であり、治験担当医師に代わって全てを代行することは不可能である。治験担当医師よりこの業務について依頼があった場合は、その方法について十分協議し、各自が協力できる範囲内で行う。通常、選択・除外基準をYes/No方式でチェックできる症例登録用紙で被験者候補の選定を行い、治験担当医師より再チェックをうけるダブルチェック方式で行う。

2.インフォームド・コンセント(IC)取得の補助

IC取得に関与する場合は、予め、治験担当医師との間で説明の手順、役割等を事前に決定しておき、同意説明文書あるいは補足資料に沿って情報を提供し、質問しやすい雰囲気の中で、患者さまの反応を確認しながら十分時間をかけて対応する。なお、患者さまの質問に対して不明な点は、あいまいな即答を避け、必ず確認後対応する。また、患者さま及びその家族のプライバシーを保護し、落ち着いた雰囲気で質問や相談に対応するために、IC取得を行う場所(個室)を確保する。

手順

準備
  1. 同意説明文書、補足資料の内容を熟読する
  2. 説明の流れを想定しイメージトレーニングやロールプレイングをする
  3. IC取得の手順(3者同席可能か?、医師及びCRCの説明する範囲は?、同意取得のタイミングは?(同日か、次回来院時か)について担当医師と十分に打ち合わせをする。
  4. IC取得実施場所の確保
実施
  1. 患者さまに挨拶・自己紹介を行う
  2. 説明を聞く時間がどのくらいあるか患者さまに確認する
  3. 患者さまの理解度を確認しながら可能な限り時間を十分かけて対応する
  4. 治験参加の意思確認がいつになるのかを確認する
  5. 治験担当医師が署名後、説明補助を行った日付を記入、署名した後、患者さまに同意説明文書を渡す
  6. 患者さまが同意した場合は、同意書に患者さまの署名、同意日を記入してもらう
  7. 同意書に記載漏れや誤記等がないかチェックする
  8. 同意説明文書と同意書を被験者に交付する(医師保管用、臨床研究支援センター保管用の同意書は所定の場所へ)
  • IC取得後、治験担当医師と治験スケジュール(登録、検査、治験薬投与開始日等)について打合せを行う。

3.患者背景・情報収集

治験を円滑に進めるために、被験者及び家族背景について情報を得ることが必要である。被験者と面談した際には、家族背景や既往歴、他院に通院していないか、当院で処方された薬剤以外に内服している薬剤はないか、治験参加について不安や疑問はないかなどの情報収集を行うとともに、その内容を「被験者情報」に記録する。また、治験担当医師への報告が必要と考えられる情報については、速やかに治験担当医師にフィートバックする。

  • 被験者登録に際しては、CRCが症例登録用紙を用いチェックし、医師の確認の後、登録センターにファックスをする。

4.治験期間中のスケジュール管理

他院・他科の主治医に治験のスケジュ-ルや併用禁止薬等を知らせる「治験参加カード」を被験者に手交するとともに治験参加中は、「治験参加カード」を携帯し、他院・他科受診する際は、「治験参加カード」を提示するよう指導する(「治験参加カード」は治験参加終了後回収する)。

必要に応じて来院予定日前日などに被験者に電話連絡を行う場合(あらかじめ被験者の承諾を得ること。電話可能な時間帯や自宅・職場等電話可能な場所や病院名公開の有無等を確認すること)は、受診日時の確認、検査等の注意事項や残薬の持参等の連絡事項を伝えるだけでなく、被験者の健康状態などについても聴取するよう心がける。

万が一、被験者が来院予定日当日に来院しない場合は、被験者に連絡を取り、来院可能かどうかを確認し、来院できない場合は、来院許容範囲内で再度予約を取り直す。

  • 年末年始、長期連休、学会等医師の不在時などに際しては日程の調整を行う
  • 夜間や休日の緊急時の連絡方法について説明する(電話交換手が出たら、「◯◯科で、××という治験に参加しています。△△医師に連絡を取りたいので、◯◯科の当直医をお願いします」と伝えるように指導する)
  • 被験者負担軽減費の支払いの来院確認を行い、治験担当医師に「被験者負担軽減費連絡票」の発行依頼を行う。

5.被験者対応

外来被験者の場合、可能な限り診察前に被験者に面談し、前回の診察日以降の服薬状況、有害事象の有無、併用薬剤の有無等の確認、バイタルサイン・体重測定を行うとともに、その内容を「被験者対応記録」に記入し、治験担当医師に報告する。診察後は、次回受診予定日時や検査内容等を説明し、「予約カード」を手交する。

また、診察日以外でも、面談または電話にて随時相談に応じるとともに、相談を受けた場合は、その内容を「被験者対応記録」に記載し、必ず治験担当医師に報告し、指示を仰ぐ。

被験者が他科を受診する場合、CRCは必要に応じて診察に同席し、医師に情報提供を行う。

6.治験薬の管理

治験薬の交付に際しては、治験薬を見せながら、服用方法を説明する。治験薬の服用方法が複雑なものについては、事前に依頼者に説明書の作成を依頼する。また、被験者の理解レベルに応じて、治験薬シートに日付を記入したり工夫をこらし、飲み忘れ、誤薬を防止するとともに、服薬日誌がある場合には、記載方法を指導する。

残薬や空シ-ト、使用済みの容器などの回収が必要な場合は、その旨を説明し、被験者の協力を得る。被験者より残薬等を回収後、治験薬の服薬・使用状況を確認する。残薬がある場合はその理由を確認し、治験担当医師に報告する。

7.臨床検査・画像検査

依頼者に被験者ごとの治験実施計画書に定められた全ての臨床検査項目と画像検査項目等を記入したスケジュール表の作成を依頼する。

(1)院内検査

予め症例ファイルにセットしておいた検査依頼書の検査項目を再度確認し、被験者に手交する(可能な限りCRCは検査室まで同行する)。

なお、CT、MRI等の検査の予約は、各科所定の用紙を用いCRCが行い、予約日を外来・病棟スタッフに報告する。

  • 検査依頼書の(医事課用)を会計ファイルに入れる
  • 治験に係わる検査は、事前に検査依頼書(マークシート)の検査項目に鉛筆でマークをつけ、来院毎に症例ファイルにセットする(治験印を押印)。
  • CT、MRI等のコピー対応
  • 予め2枚必要な場合
    治験印を押印した検査依頼書に「二部出し」と記載し、依頼者分は被験者氏名をマスキングする。
  • 後で必要になった場合
    治験印を押印した検査依頼書に「CTコピー」、「撮影月日」、「必要枚数」を記載し、CRCが検査依頼書の(医事課用)を医事課治験担当者へ。

(2)外注検査

治験契約締結後、外注検査委託業者と検体容器の保管、検体採取方法及び保存方法などの取り扱いについて打ち合わせを行う。CRCは、外注検査委託業者から検体容器を受け取り、事前にチェックし臨床研究支援センター等にて保管・管理し、検査日当日に検体容器を外来または病棟に持参する。検体採取後、指示通り保管し、外注依頼伝票に必要事項を記入し、外注検査委託業者に回収を依頼する。なお、採血後の処理が必要な場合には、事前に臨床検査担当者と打ち合わせを行う。

治験終了時の外注検査キットの回収方法・廃棄方法などについても確認を行う。主な外注検査委託業者:SRL(毎日来院)、三菱化学メディエンス(要連絡)、BML(要連絡)

  • 夜間や休日の時間外に、検査部に検査依頼が必要な場合は、検査部技師長に対応の可否について確認をとる。対応可能な場合は、被験者エントリー後、治験スケジュール表を作成し、検査部へ提出する。

8.症例報告書(CRF)の作成補助

CRCが記載できる部分は、医学的判断を伴わない事項に限られるが、依頼者により許容範囲に違いがあることから、事前に確認するとともに、必要に応じCRFの該当箇所に印をつけるよう依頼する。また、CRFの記入例や記入時の注意事項等を依頼者に十分確認しておく(「CRF作成の手引き」を熟読しておく)。なお、CRFの作成における転記ミス、記載漏れ等の防止のため、作成者以外がカルテとの整合性をチェックするダブルチェック方式にて行う。

  • CRFは鉛筆で下書きし、不明確な点は依頼者に確認し、ボールペンにて清書する。

9.副作用、有害事象発現時の対応

院内で副作用、重篤な有害事象(SAE)が起こった場合、治験担当医師より依頼があれば、書類作成補助を行う(報告の流れ、報告までの制限時間等を確認する)。また、有害事象、副作用発現後の経過観察が必要な場合は、治験担当医師と相談のうえ業務内容を決定する。

副作用や有害事象を早期発見するために、CRCが検査値の異常変動の有無を確認し、異常値が認められた場合は、迅速に治験担当医師に報告する。

  • 院内でSAEが発生した場合の第1報は、可能な限り書面にて依頼者に連絡する(事前に依頼者に報告様式を提供してもらう)。

10.モニタリング・監査の対応

治験担当医師よりモニタリング・監査の立会い業務を依頼された場合は、依頼者に必要な資料を確認し、当日までに準備する。また、CRCのみでモニタリング・監査に対応することもあるので、カルテの記載内容や原資料の情報等について、事前に治験担当医師に確認しておく。なお、被験者を特定できる項目(住所・氏名等)については、これらをマスキングして被験者のプライバシーの保護に努める。

  • 外来・入院者のカルテ、フィルムの借用方法外来・病棟に「貸出しノート」が有る場合には、それに必要事項を記入し、無い場合には、臨床研究支援センターの「診療録等借用申請書」に必要事項を記入し、外来の場合は受付に、病棟の場合はチームリーダーに渡す。直接閲覧終了後は速やかに返却する。なお、退院者の場合は、診療録管理室より借用する(退院者でも未整理の場合は病棟にあり)。

11.必須文書管理

治験責任医師より治験責任医師保管必須文書の管理を依頼された場合は、必須文書ファイルにて保管・管理を行う。

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