病み悩める者に誠実に向き合い
医学の心理を追い求める医師たるべく
その礎を築くことを切に願います。

伊藤 薫樹
Shigeki Ito
医師卒後臨床研修センター長

2004年から始まった医師臨床研修制度も17年目になりました。以前の臨床研修は、地域医療との接点が少なく専門に偏り「病気を診るが、人を診ない」と評され、また研修内容や研修成果もまちまち、処遇も不十分で研修に専念出来ない状況でありました。このような状況を改善し、法に基づく(新たな)臨床研修としてスタートし、現在に至っております。この研修を修了した医師たちが、今や医療現場の中核を担っており、岩手医科大学附属病院の臨床研修プログラムから巣立った医師も179名になりました。

岩手医科大学附属病院には「基本プログラム」と「産婦人科・小児科・ 周産期プログラム」の2つがあります。当院のプログラムの特徴は、必修以外の期間を自由に選択できることにあります。当院は、大学附属病院として44の専門科を備える特定機能病院であり、ローテーション研修において不足する診療科はほぼありません。臨床はもちろん、医学研究においても全国レベルの指導医が揃っており、大学院における学位取得の環境も整っているのも大学附属病院ならではのメリットです。興味のある診療科や将来専攻する診療科を中心に、オーダーメイドで組み立てることが可能です。また、新たな専門医制度における基本領域19の全てのプログラムも備えており、専門研修へもスムーズに移行できます。ただ、一方で大学病院ゆえに、地域総合医療を経験する機会は少ないとも言えます。岩手県では、県内12の臨床研修病院で「いわてイーハトーヴ臨床研修病院群(以下、イーハトーヴ病院群)」を形成し、病院間で不足する診療科を補完し合いながら、研修医が希望する病院での研修を可能にする「たすきがけ」研修を行っております。これまで、当プログラムの研修医の多くは自由選択期間を活用して最前線の地域病院での研修を積極的に希望しており、高度専門医療と医師不足・医師偏在地域における地域総合医療をバランスよく研修しております。

当院医師卒後臨床研修センター(以下、研修センター)内には、より良い研修環境を目指して専門委員会、活性推進委員会を設けて改善活動を続けております。また、院外では「イーハトーヴ病院群」の活動にも積極的に参画しており、新任研修医のオリエンテーション、2年次研修医のスキルアップセミナー、学生説明会などを通じ、他の研修病院と一丸となって良医の育成に取り組んでいます。研修センターに配置された5名の専従スタッフは、ローテーションや研修状況、たすきがけ研修、心身の健康状態まで研修医1人ひとりを親身にきめ細かくサポートし、安心して研修に取り組める環境を提供しております。
この初期臨床研修の理念は、「医師としての人格」を涵養し、「医療の社会性」を認識しながら「基本的な診療能力」を身につける、とされています。『誠の人間の育成』を建学の精神に掲げる岩手医科大学での研修を通じて、高い倫理観に裏打ちされ、病み悩める者に誠実に向き合い、医学の真理を追い求める医師たるべく、その礎を築いていただきたいと切に願うものであります。

2021年4月