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治療の対象となる患者さんは?
歯科処置を行っているあいだ、口をあけて動かずにいることがとても難しく、通常設備の診療所での対応が著しく困難な患者さんです。具体的には、15歳以上の重度の知的障害、自閉スペクトラム症、脳性麻痺、てんかん、各種先天性の症候群などの患者さんに対応しています。15歳未満は小児歯科にて対応しています。詳しくは電話にてお尋ねください。
対象となる歯科疾患は?
虫歯、歯周病、歯の欠損など、歯科疾患全般が対象です。取り外しの入れ歯や矯正、口腔内の腫瘍など専門的治療が必要な場合は、患者さん一人一人について専門診療科(補綴科、矯正歯科、口腔外科など)を交えて話し合い、治療やその後の経過観察の方針を決定します。なお、歯科インプラントはほとんど行っていないのが実情です。
治療スタッフおよび設備について
歯科医師3名(准教授1名、講師1名、常任研究員1名)および歯科衛生士2名の5名で、ほとんどの歯科治療とすべての全身麻酔を行っています。
当診療科の一週間のスケジュール
木曜日に矢巾の附属病院にて全身麻酔下歯科治療を行っています。月曜日と火曜日、水曜日、金曜日は意識下(眠っていない)での歯科治療あるいは経過観察(経過観察とブラッシング指導)、初診(初回の診察)を行っています。土曜日(第2、第3、第5土曜日は休診)は経過観察のみを行っています。
歯科治療中の行動調節法の決定について
患者さんが歯科治療を受けられるよう、様々な方法を用います(行動調節)。
その中でも心理的方法は怖くない事(例えば治療台に座るだけ)から始めて、実際の歯科治療にだんだんと近づけていったり、治療の時間をだんだん長くしていったりして、通常の歯科治療に慣れさせていく方法です。しかし、おのずと治療ができるようになるまでの来院回数や治療回数が多くなりますし、障害が重い患者さんなどでは、いつまでも進展がみられないことも少なくありません。
抑制法は患者さんを押さえて治療する方法です。当科でも少なからず用いていますが、嘔吐を誘発して危険なこともありますし、患者さん本人と当科との信頼関係が揺らぐこともありますので、実はあまり好ましい方法とはいえません。
全身麻酔法は周囲の方の多大なご協力と患者さんの良好な全身状態が揃って初めて使える方法です。治療の予約について
当診療科の患者さんの治療にはさまざまな配慮が必要です。見知らぬ人の存在を嫌う患者さんも少なくありません。今の人員と設備では、一度に多数の患者さんを診療することはできません。したがって、診察には予約制をとっています。予約には電話を使っていただきますが、午前中は出られないことも多く、午後(14:00~17:00)がつながりやすいです。予約外の患者さんには、長い時間待っていただいたり、お急ぎの場合は、可能であれば他の診療科に移っていただいたりしています。
初診時(最初の受診のとき)
この日は診察のみとなります。患者さんおよび付き添いの方からいろいろ伺った後、口の中と全身を診察すると同時に患者さんの行動を観察します。次回以降の治療方針および行動管理法(麻酔を使うか使わないか)をこの時決定いたします。歯科および医科からの紹介状は非常に参考になります。最後に必要に応じて口の中と胸部、頚部のエックス線写真を撮影して終了となります。口の中の診察の際、患者さんが不穏になって嘔吐すると危険ですので、食事は予約時刻の2時間以上前に終了しておいてください。
治療終了後の経過観察(ブラッシング指導)について
歯科処置が終了した患者さんには、歯科医師による定期的経過観察をお勧めしています。場所は、可能であればお近くの歯医者さん(ご紹介いただいた先生)です。ちなみに当診療科での経過観察では、口の中の診察のあと、歯垢染め出し液(赤色)を用いた歯磨きチェックと歯磨き指導を行っています。経過観察には、患者さんの口の中を清潔に保つだけでなく、歯科の受診に慣れていただく効果もあります。
臨床研究 研究・学会発表へのご協力について(お願い)
当科では、全身麻酔における気道確保(息をする道をつくる器具を喉に入れること)の際、えられた喉の所見(様子)をカルテ(診療録)より調査し、まとめて学会発表する予定です。(患者さんを特定できる個人情報は含みません。)
患者さん、あるいは保護者の中でこの研究に含まれることをご承諾いただけない方はお申し出ください。研究対象に含まれないようにいたします。(対象となるのは2018年以降に全身麻酔を受けた患者さんです。)
なお、この研究にご協力いただけない場合でも後の診療に影響を及ぼすことはありません。お問い合わせ先
住所:020-8505 岩手県盛岡市内丸19番1号
電話:019-613-6111(代表)
担当:岩手医科大学 口腔保健育成学講座 小児歯科学・障害者歯科学分野
熊谷 美保