医療事故等公表事例

発生日 概要 原因 再発防止対策・改善策・対応状況
1 2018年
3月29日
2018年2月11日に運用を開始した、当院の新電子カルテシステム(富士通株式会社製)は、既存システムで稼働していた細菌検査部門システムを新システムに接続することで、既存細菌検査システム上で入力された検査結果が新システム上に表示される仕様となっています。
しかし、2018年3月29日、複数の細菌に関する薬剤感受性検査結果を表示する場合で、当該検査に感受性検査が行われない細菌が含まれる場合に限り、感受性検査結果が新電子カルテシステム上に正しく表示されていない事例が発見されました。
なお、本不具合覚知後、当該運用期間における患者様への直接的影響を調査し、診療内容への影響がなかったことが確認されました。
本事故(インシデント)の原因は、細菌検査システムから送信されるデータ形式が、富士通株式会社製の新電子カルテシステムのインターフェース仕様に準拠せず、タグ情報が欠落していた技術的不具合のためです。 ・当院の対応
2018年5月24日に結果表示に対する修正プログラムを適用して、過去データを含め正常に表示されることを確認しました。
・富士通株式会社の対応
こちらから
2 2021年
10月28日
70歳代の男性。糖尿病の血糖コントロール不良のため前医に入院。その際、肝機能障害、および胆管の拡張を認め、閉塞性黄疸と診断され、胃切除の既往もあることから、当院消化管内科に紹介入院となりました。入院後、黄疸の治療目的に逆行性膵胆管造影検査(ERCP)を施行しましたが、胃切除術後であることと腫瘍による閉塞が強く処置を断念しました。後日、同処置を再度施行しましたが、十二指腸乳頭よりカニュレーションが進まず中止となりました。そこで、日を改め経皮経肝胆管ドレナージ(PTCD)を鎮静下で行いましたが、数回穿刺するも留置が困難で、胆管も虚脱傾向であったため処置を中止しました。検査の1時間半後から血圧の低下を認め点滴の調整により血圧はやや回復し経過観察をしていたところ、検査の6時間半後に血圧低下、呼吸抑制が出現しコードブルー(院内救急対応)を発動し一時状態が回復しました。その後、主治医グループの判断で対症療法の方針となり、翌日血圧が徐々に低下し、死亡に至りました。 当事例の死因は、閉塞性黄疸に対する経皮経肝胆管ドレナージにおいて、処置に伴う肝臓からの出血に起因する出血性ショックと思われます。既往疾患に対する内服薬である抗血小板薬2剤(バイアスピリン、クロピドグレル)ならびにイコサペント酸エチル粒状カプセルを休薬せずに処置に及んだことも出血量の増加、自然止血困難等、病態の悪化に影響を与えた可能性があります。急変後、ご家族に消化管出血と敗血症性ショックを前提に、さらに背景に膵臓がんがあることからDNARの説明を行い、処置後の血圧低下、貧血を認めるなど出血を強く疑う所見を有したにもかかわらずCT等の積極的な検査および止血手技を検討しなかったことも死亡に至った一因として推察されます。 当事例については、医療事故調査制度に基づき、当院に外部委員を含む医療事故等調査委員会を設置し、当事例に係る臨床経過の確認、死因の検証、臨床経過に関する医学的検証、再発防止策の検討を行い、調査報告書を取り纏めました。
当院は、今回の医療事故等調査委員会の提言に基づき、以下の再発防止策を実施してまいります。

  1. 侵襲的処置が予定される患者に対する抗血小板薬・抗凝固薬休薬の対応
  2. インフォームド・コンセントにおける一括した説明同意の禁止
  3. PTCD(経皮経肝胆管ドレナージ)手技の見直し
  4. 各種処置に対するクリニカルパスの作成と運用
  5. Rapid Response System(院内迅速対応システム)の活用とTeamSTEPPSによるコミュニケーションの推進
  6. チーム医療の推進
  7. DNAR(Do Not Attempt Resuscitation)の正しい理解と運用
  8. 医療事故発生時の対応の周知徹底
3 2022年
7月1日~13日
外来化学療法室および病棟(入院)で抗がん剤治療を受けられた患者さま22名に対して、抗がん剤の調製時に過誤があり、抗がん剤が過量に投与される事故が発生しました。過誤は、7月1日から7月13日にかけて調製した抗がん剤(凍結乾燥製剤)の一部で、予定投与量の1.01~1.57倍の過量投与がなされました。なお、対象となった患者さま22名には、主治医より健康状態の確認と状況の説明をさせていいただいております。2022年9月6日現在、対象となった患者さまへの影響は確認されておりません。 当事例の原因は、抗がん剤調製鑑査システムを利用した抗がん剤(凍結乾燥製剤)の調製手順に関する指導体制の不備と当事者(薬剤師)の理解不足が原因と考えられます。
凍結乾燥製剤の調製では、鑑査システムで表示される「溶解液」と「溶解液量」で製剤を溶解後、必要量抜き取る運用としていましたが、当事者がその点を正しく理解しておらず、調製に関する指導を行った薬剤師も、当事者の理解度を十分に確認していませんでした。また、当該手順における鑑査システムの溶解指示内容と手順書の記載がわかりづらい表現となっていたこと、当事例の性質上、鑑査システムによる重量鑑査ではエラーとして検出できないものでしたが、システムに依らない確認の手順が明確化されていなかったこともそれぞれ一因として挙げられます。
当事例については、緊急安全対策会議および総合医療安全対策会議での審議を経て、原因の検証と再発防止策の策定を行いました。当院は、以下の再発防止策を実施してまいります。

  1. 化学療法管理室に新たに配属となる薬剤師に対する抗がん剤調製手順についての確認体制の見直し
    1. 抗がん剤の調製手順をレベル分類し、各レベル毎に調製手順の確認と調製実施の許可を行う。
    2. 各レベルでの調製実施許可が得られるまで、指導にあたる薬剤師により調製の鑑査と手順の確認と指導を行う。
  2. 抗がん剤調製鑑査システムに関する手順書の改訂
    1. 凍結乾燥製剤の調製について、実際の鑑査システムの画像を手順書に追加する。
    2. 「薬品名、規格、バイアル内の残液の確認」を調製終了後の手順に追加する。
  3. 抗がん剤調製鑑査システムの改修
    1. システム画面に表示する「溶解液」と「溶解液量」をわかりやすい記載に変更する。
    2. 「薬品名、規格、バイアル内の残液の確認」の注意喚起を調製終了時の表示に追加する。
[関連公表資料はこちら]
4 2022年
11月26日
60歳代の男性。膵頭部がんの手術を目的に入院し、全胃幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行しました。術後は集中治療管理を行い翌日、全身状態が安定していたため一般病棟に転出しました。同日睡眠薬の内服希望があり入院前より常用していたゾルピデム5mgを内服しました。翌日午前1時に心電図モニターの波形が乱れたため訪室するとベッドサイドに立ち、病衣を脱ぎ、ドレーン刺入部に触れる仕草やつじつまの合わない言動が聞かれたため、医師の指示でアタラックスP1アンプルと生理食塩水100mLの投与を開始しました。その後、点滴を追加し、3時、アタラックスP終了時および5時の時点で眠っていることを確認していました。
5時30分、同室患者からナースコールがあり訪室すると、病室の中央で向かい側のベッドに頭を向け仰臥位で倒れているところを発見しました。呼びかけに反応なくJCS Ⅲ-300、対光反射なく、瞳孔2.0mmで、頭部CTを施行し急性硬膜下血腫、くも膜下出血、頭蓋骨骨折の診断となりました。
脳神経外科医の診断では、大開頭による外減圧術は止血困難で、脳圧管理困難に陥る可能性が高く外科的手術の適応外であると判断されました。
その後保存的加療を続けましたが、転倒より7日後に永眠されました。
当事例の死因は、転倒による後頭部強打による広範囲脳損傷と考えられます。転倒の原因は明らかではありませんが、当該患者が術後のせん妄状態であった可能性が挙げられました。
過去の入院時に転倒歴がありましたが、過去1ヵ月を超える転倒歴については考慮されていなかったことから、転倒・転落アセスメントでは危険度Ⅱの評価がされており、看護問題としての対策は立案されませんでした。
せん妄アセスメントも行っていましたが、アセスメントシートにせん妄の直接因子となりうる具体的な薬剤名を記載されていない点、せん妄の予防対策として院内標準の取り組み(パンフレットによる説明、不眠時・不穏時指示薬の統一化など)が行われていない点など、改良すべき点が確認されました。
医師のせん妄に関する知識が不足していたことも背景にあり、今回使用したアタラックスPも軽い睡眠作用があり、せん妄のリスク因子となり得ますが、これまで同様のケースで多くの患者に対して使用されてきました。
療養環境については、転倒・転落ハイリスク時の対策ツールが見守りカメラのみであり、かつ、取り付け可能な病室が限られており、今回の病室もカメラの取り付けができない病室でした。
当事例については、医療事故調査制度に基づき、当院に外部委員を含む医療事故等調査委員会を設置し、当事例に係る臨床経過の確認、死因の検証、臨床経過に関する医学的検証、再発防止策の検討を行い、調査報告書を取り纏めました。
当院は、今回の医療事故等調査委員会の提言に基づき、以下の再発防止策を実施してまいります。

  1. 転倒・転落アセスメントスコアシートの改訂
  2. 転倒・転落予防アルゴリズムの作成
  3. せん妄対策チームの立ち上げ
  4. 不眠時・不穏時指示薬の院内標準化
  5. せん妄・転倒リスクのある病棟配置薬の見直し
  6. 離床センサーの導入
  7. 見守りカメラの使用の再周知
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