医療の質・安全管理部門
医療安全管理部

概要

岩手医科大学附属病院は岩手県唯一の特定機能病院として高度医療の推進に取り組んでいます。このような医療技術の発展の一方で、人口の高齢化と医療の一層の複雑化から医療の質と安全の向上が広く求められています。医療安全管理部は岩手医科大学附属病院で医療を受けられるすべての患者さんに安全で質の高い医療を提供することを目的に設置されています。医療安全管理部長(医師)をはじめ専従看護師、専従薬剤師、事務と多職種により構成され、インシデント報告の収集分析、医療安全推進委員会運営、医療安全マニュアルの作成、院内医療安全講習会開催等の平時からの安全対策に加え、医療事故発生時等有事の対応も行っています。患者さんが安心して医療を受けていただける環境づくりに取り組み、岩手医科大学の基本方針である患者様本位の安全な医療の実践に向け活動しています。

業務内容

1.インシデント報告書等に関する事実確認と問題点の検討、対応への助言・指導、改善策の立案
2.病院内を巡回し医療安全対策の実施状況の把握および分析
3.重大なまたは部門を横断する医療事故の原因分析および改善策の立案
4.医療安全管理部業務に関する企画・立案・評価
5.医療安全管理のための講習会の企画・実施
6.患者相談窓口の相談情報に係る対応策の立案、改善および支援
7.その他、医療安全対策の推進に関すること

活動報告・活動目標

■2024年度活動報告
1.インシデント・重大インシデント報告件数10,000件以上
2024年度インシデント・重大インシデントレポートの総件数は8,874件で2023年度(10,117件)より1,243件減少しました。レベル別報告件数の前年度比では、すべてのレベルが減少しており、重大インシデントの減少は成果であった一方、インシデント報告も減少しており、小さなエラーを解決することで重大事故を防止することや成功体験の分析と共有に力を入れる必要がありました。

2.患者誤認防止の取り組みの継続
2024年度の患者誤認事例の件数は、2023年度より133件減少し、189件でした。患者誤認は患者と関わる場面の他、書類の作成やデータの保存、転送といった情報管理の場面で多く発生しており、正しい患者確認と最終実施前の手元情報との照合を確実に実施していきます。診療日の朝と昼に患者確認のご協力をお願いする館内放送を継続しています。また、看護部セフティナース会が主体となり患者誤認防止のポスターを希望部署に配布し、各部署での患者誤認防止の啓発を図りました。

3.転倒・転落において、レベル3b以上の重大インシデント予防対策の強化
2024年度の転倒・転落事例の件数は、2023年度より87件減少し、805件でしたが、転倒・転落を未然に防ぐことができたことを示すレベル0報告が39件と増加しており、患者の状態アセスメント力の向上と予防具の適正使用に取り組んだ結果発生件数減少につながりました。一方で、2024年度の転倒・転落に係る重大インシデントは2023年度より2件増加し13件でした。今後は転倒時の影響レベルの低減に向けた対策が必要と考えます。

4.生体情報モニタの適正使用に向けた取り組み
モニタリングの運用に関連したインシデントを背景として、院内におけるモニタリング適正使用環境改善を目的として多職種(医師、看護師、臨床工学技士、情報管理課)で構成されたMACT(モニターアラームコントロールチーム)を立ち上げました。MACT、医療機器部会と連携し、生体情報モニタを適正使用するための環境整備、人材育成に取り組みました。

5.2024年度の課題への取り組み
1)病棟定数配置薬適正化に向けた取り組み
病棟配置薬は緊急時等、患者に早急に投与が必要な場合に対応するため特別に配置しています。診療科医師や病棟薬剤師、病棟看護師と連携を図り定数配置薬を見直し、特に必要な緊急時薬のみの配置となるよう薬剤巡視を行いました。また、巡視では、病棟での薬剤管理や適正使用に関連した聞き取りや現状確認を行いました。現在、病棟定数配置薬の運用方法(処方・オーダー等)に関しても検討を行っています。

2)口頭指示書の適正使用に向けた取り組み
病院機能評価において「口頭指示は原則行わない」とされており、2023年度に口頭指示書を改訂しています。院内巡視で口頭指示書の周知と活用状況を確認し十分満足の評価でした。緊急時の口頭指示を受ける場合のプロセスを遵守し、安全に治療が行われるようPDCAを行っていきます。

6.医療安全シンポジウム2024の開催
10月5日(土)、大堀記念講堂で医療安全シンポジウムを開催し、本学教職員・学生(ウェブ参加者も含む)が参加しました。このシンポジウムは、2023年10月に附属病院で発生した医療事故を受けて、医療従事者としての自覚を再認識するとともに二度と同様の事故を起こさず、また、医療事故を風化させないよう、大学全体として医療安全に係る意識の醸成を図ることを目的に行われました。
当日は、2003年に東京都内の病院の医療事故でご子息を亡くされた、「患者・家族と医療をつなぐNPO法人架け橋」の理事長を務める豊田郁子氏の基調講演と小笠原学長・森野附属病院長・肥田医療安全管理部長・赤坂小児科診療科部長・佐藤看護部長・豊田氏によるパネルディスカッションが行われました。
本シンポジウムは毎年開催することとし、第1回目を終え参加した医療従事者と学生は、当院の医療安全の課題を共有し再発防止を誓いました。

■2025年度活動目標
1.インシデント・重大インシデント報告件数10,000件以上
2.患者誤認防止の取り組みの継続
3.転倒・転落において、レベル3b以上の重大インシデント予防対策の強化
4.生体情報モニタの適正使用に向けた取り組み

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