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歯科放射線科の主な診療は、視診では観察することができない歯や骨の中、あるいは軟部組織の深部にある病気について、X線やCT・MRI、超音波などを使って診断することです。歯や小さな領域の歯槽骨の診断には、検出器を直接口腔内に入れてX線撮影を行う口内法と呼ばれる撮影が行われます。また、上下顎全部の歯や顎骨の検査にはパノラマX線撮影が行われ、これらの画像による診断が基本となります。一方、口腔内に生じた腫瘍や大きな嚢胞・炎症に対しては、CTやMRIあるいは超音波検査など、高精度の画像診断が行われます。このように多くの検査法がある中で適応判断や検査内容の調整、そして画像診断と放射線科の関わるべき内容は多岐にわたります。診断のプロセスをクオリティコントロールし、必要最小限の検査で患者さんに最適となる情報をフィードバックすることが放射線画像診断の神髄です。近年、深層学習などを用いた人工知能により、診断補助ツールなどの開発も盛んに行われていますが、まだ部分的な判定にすぎず、被検者のおかれた社会的・環境的状況も加味した判断には人間による質の担保と判定が必要不可欠です。
がんなどの悪性疾患については、歯科―医科連携が近年進んでいます。歯科放射線科では既に医科放射線科と協力体制を敷いており、弾力的な運用をしています。悪性疾患の取り扱いの主科は口腔外科となりますが、医科との連携のもと頭頚部外科による集学的治療が進められており、歯科放射線科も画像診断のみならず、放射線治療科と連携をとりつつ診療にあたっています。
また、近年、特殊な病態に対し画像下治療(IVR)を応用した低侵襲治療も発達してきており、医科との連携のもと高度な診療を行う体制を整えています。