医科
呼吸器外科

  • 当科は矢巾にある本院のみで外来診療・入院診療・手術等を行っております。紹介状を持参して当科を直接受診される場合は矢巾の附属病院へご来院ください。

    当科では、肺悪性疾患(肺がん・転移性肺腫瘍等)、肺良性疾患(良性肺腫瘍・嚢胞性肺疾患・気胸・膿胸等)、縦隔悪性腫瘍、縦隔良性腫瘍、胸壁腫瘍、手掌多汗症、胸部外傷、重症筋無力症の外科治療や、診断的肺生検・縦隔リンパ節生検などを中心として診療を行っております。

    肺がん

    我が国の死因の第1位は悪性新生物であり、その中でも肺がんは部位別の死亡数の第1位です。肺がんにかかる患者数は大腸がん、胃がんに次いで第3位ですので、生存率が低く、早期発見・早期治療が求められるがんであると言えます。胸部レントゲンのみでは、1cm以下の小型早期肺がんを見つけるのは非常に困難であることは意外と知られていません。CT健診が最善策と考えられますが、現行の健診制度の中では毎年健診を必ず受けることが重要です。健診は必ず毎年受けるように心がけて下さい。

    当科で最も力を入れているのがこの肺がんの治療で、昨今では年間約150例の手術を行っております。肺がんの手術は、従来肩甲骨部から前胸部にかけて30cm程に切開する手法(開胸手術)が取られていましたが、当科では胸腔鏡下手術(カメラを用いた手術)を導入しており、完全鏡視下手術といって胸腔鏡だけで肺葉切除が可能な手術手技を用いています。創が1.5~4cmと小さいことから美容的にも目立たないのみならず、術後の疼痛が圧倒的に軽減でき、回復期間が早いため入院期間の短縮(術後5日~1週間程度で退院)に貢献しております。

    2019年より、ロボット支援下手術も行うようになりました。病変の部位、病状の進行度合いや全身状態により対象とならない場合もございますが、ご希望の際は外来担当医にご相談ください。

    転移性肺腫瘍

    大腸がん・腎細胞がん・乳がん・子宮がん・甲状腺がん・精巣腫瘍・骨肉腫・軟部組織肉腫(横紋筋肉腫・軟骨肉腫・脂肪肉腫等)など他臓器腫瘍からの肺転移に対しても、原発巣がコントロールされていれば、胸腔鏡を用いて、肺機能をできるだけ温存しながら、積極的に切除を行っています。

    良性肺腫瘍

    良性腫瘍には乳頭腫、組織球腫、過誤腫、結核腫、肉芽腫、硬化性肺胞上皮腫などがあります。良性肺腫瘍に関しても胸腔鏡を用いて、できるだけ低侵襲で切除を行っております。

    嚢胞性肺疾患

    肺の末梢単位である肺胞が破壊されて拡大する気腫性肺嚢胞や、気管支の発生途上の異常分岐による先天的な気管支原性肺嚢胞などが相当します。気腫性肺嚢胞は大きくなると正常肺を圧迫することにより呼吸困難をきたすため、巨大なものや拡大傾向にあるものは手術で切除や縫縮術を行っています。また、気管支原性肺嚢胞は感染を繰り返すことがあるため、胸腔鏡を用いて積極的に切除しております。

    気胸

    肺に穴が開き、空気が漏れる疾患を気胸といいます。気胸の多くは自然気胸でやせ形の若い男性に多い原発性自然気胸と、何らかの疾患が原因で気胸を起こす続発性気胸に分かれます。続発性気胸の原因に肺気腫がありますが、その多くは喫煙が原因です。気胸は再発を繰り返すことが多く、その度に次に再発する確率が上昇するという特徴をもっています。原発性自然気胸の手術は胸腔鏡を用いて行いますので、傷跡は1〜2cmの小さな創が2~3カ所つくだけで目立ちませんし、経過に応じて数日で退院可能です。続発性気胸の治療も胸腔鏡手術を行いますが、高齢であったり、肺が脆弱であったりした場合は手術に耐えられないことあるため、手術以外にも各個人の呼吸機能を考慮し適切な治療法を選択しています。

    縦隔悪性腫瘍

    胸腺がん・浸潤型胸腺腫が代表的な疾患です。切除可能な場合は手術を選択しますが、放射線照射療法、または抗がん剤による化学療法を組み合わせて治療することもあります。当科では胸腔鏡手術を第一選択としますが、隣接臓器に浸潤している(病変が周囲に広がっている)場合は合併切除をするために胸骨を正中に切開して行う手術(胸骨正中切開による手術)を選択する場合もあります。

    縦隔良性腫瘍

    気管支嚢腫や心膜嚢腫などの先天性嚢腫、非浸潤性胸腺腫・奇形種・神経原性腫瘍などがあります。胸腔鏡手術や、ロボット支援下手術で行いますが、発生する場所と腫瘍の大きさによっては胸骨正中切開による手術になることもあります。

    胸壁腫瘍

    肋骨腫瘍、肋軟骨腫瘍、胸壁軟部腫瘍などが相当し、胸壁切除を行って切除します。

    手掌多汗症

    緊張すると手のひらからポタポタと垂れるくらい汗をかく人はいませんか?これは手掌多汗症という病気の可能性があります。患者さんによっては胸腔鏡を用いて交感神経幹を適切な位置で切断する手術を行うことで症状が改善することがあります。手術後は手掌以外の場所に汗をかく代償性発汗が必発ですので、手汗による日常生活への影響の程度とのバランスをよく話し合った上で治療を計画いたします。手術以外の治療法もありますので、お悩みの際はまずはお近くの皮膚科でご相談ください。

    胸部外傷

    交通事故などで、肋骨が折れて胸の中の出血が止まらない、折れた肋骨が肺に刺さって肺からの空気漏れが止まらないなどの状態に、開胸止血・肺の修復・肋骨の固定・異物除去などを緊急で行います。

    重症筋無力症

    神経と筋肉との間に介在するアセチルコリンという神経伝達物質の受容体に対する抗体(抗アセチルコリンレセプター抗体)が作られ、神経と筋肉の間の情報伝達が障害されて筋力が低下する病気です。軽度ですと眼瞼下垂(まぶたが下がる)や復視(物が二重に見える)などの眼症状に留まりますが、進行すると近位筋の筋力低下(茶碗を持つのが疲れる・落とす等)や嚥下障害(食べ物を飲み込みにくくなる)をきたし、重症になると呼吸困難を生じます。治療はステロイドや抗コリンエステラーゼ剤の内服や血漿交換などの神経内科的治療が主体となりますが、縦隔にある胸腺という組織が抗アセチルコリンレセプター抗体を著しく産生していることから、胸腺を周囲脂肪組織とともに摘出する拡大胸腺摘出術を行うことで、重症筋無力症の症状を改善させることが知られています。当科では脳神経内科と連携して、重症筋無力症の治療に外科的側面から、その治療の一端を担っています。重症筋無力症の手術も完全胸腔鏡下で行っています。

    診断的肺生検・縦隔リンパ節生検

    間質性肺炎などの内科的治療方針を決定するためには、実際の肺組織の病理組織学的所見が必要となる場合があります。当科では呼吸器内科と連携し、できるだけ侵襲を少なく安全に肺組織を採取できるよう、胸腔鏡を用いた診断的肺生検を行っております。また、悪性リンパ腫やサルコイドーシス等の縦隔リンパ節が腫大する病気の診断に、侵襲の少ない胸腔鏡を用いたリンパ節の生検を施行し、その診断に貢献しております。

    →呼吸器外科についての御相談・問い合わせは、0196137111(代表)呼吸器外科外来まで遠慮なくどうぞ。

  • 当科は矢巾の本院にて入院治療を行っています。

    呼吸器疾患について常に呼吸器内科との間で患者さんの御依頼・紹介・相談等の密接な連携が取りやすい環境を整えております。当科ではチーム医療制により、呼吸器外科の全ての医師がその患者さんについて把握できる体制を整えております。

    患者さんへの病状や手術についての御説明では、御自分の病状について十分理解していただいた上で我々と共に病気に対して闘っていくことを目標としており、一般の方にも、よく理解できるように懇切丁寧に説明することをモットーとしており、かつ御説明内容を書いてお渡しするようにしております。

    当科では、毎朝患者さんについて病状と治療方針について検討会を行っており、2週間に1回は呼吸器内科・放射線科との合同カンファレンス、月1回は呼吸器内科・放射線科、病理診断グループを交えた合同カンファレンスを開催しており、日々の診療にフィードバックしております。

BACK TO TOP